当院の乳がん検診について
2012年4月に開業して5年間で様々な乳がん検診にこられる患者様を診てまいりました。
その中で多くの患者様が乳がんの検診に「超音波しか行なっていない」ということがわかり、
マンモグラフィの重要性を開業以来患者様にお伝えしております。
超音波しか行なっていない患者様の多くは「マンモグラフィは痛いから超音波しかしていない」という声をよく聞きます。
しかし、超音波健診だけでは、早期乳がんの兆候である微細石灰化を発見することができません。
マンモグラフィはこの微細石灰化を発見することができる重要な検査になります。
さらに当院では、マンモグラフィの弱点である高濃度乳腺で見落とされる腫瘍を発見するためABUSを導入し、
マンモグラフィとABUSの両方で検査することで、乳がんの早期発見に力を入れております。
乳がん検診の種類
問診・視診・触診
症状などについて話をうかがい、しこりがあるかを確認します。しこりがある程度大きくないと判別できないため、早期発見には向いていません。
マンモグラフィ
乳頭、乳房皮膚、皮下と腋窩脂肪、乳腺組織、リンパ節など広範囲の読影が可能であり、早期乳がんの特徴である微細石灰化を発見することも可能です。当院では、最新のフラットパネル型デジタルマンモグラフィ(AMULET Innovality)を導入しており、より精密な検査が可能です。
ただし、20代など若い女性の場合は、乳腺が多いためマンモグラフィ検査は向いているといえません。生理時期などの兼ね合いで痛みを強く感じる場合があり、航空機で東京からニューヨークに行く際に受ける自然放射線量の半分程度ですが被ばくの問題もあります。
超音波検診(エコー)
圧迫による痛みや被ばくの心配がなく、妊娠している方でも受けられます。手に触れない数ミリの小さなしこりを見つけ出すことも可能ですが、微細石灰化を見つけるのには向きません。検査担当者の技術に依存される部分もあるため、熟練が必要です。
比較的若い女性に向いた検査だと言えますが、現在ではマンモグラフィ検査と併用することでより精度の高い検診も可能になっています。-MMG)を導入しており、より精密な検査が可能です。
乳腺専用3D超音波検査装置Invenia ABUSエイバス検査
超音波検査の中でもこのエイバスは、高濃度乳腺にも対応できるより精密な検査機器です。
日本人に多い高濃度乳腺は、乳腺組織が濃い白色に写るため、マンモグラフィ検査では約1/4で乳がんを見落とす危険性が指摘されています。一般的にマンモグラフィによる乳がん検出感度は、40代で71.4%とされていますので、実に30%弱の乳がんがマンモグラフィで見えないのです。そこで、マンモグラフィ検査にエイバス検査を併用することで、乳がん検出能力を高めます。
乳がん検診を選ぶ時に
乳がんは放置して進行するとバストや命を失う可能性があるため早期発見が重要ですが、あらゆる年代の女性がすべての検査を毎年受ける必要がありません。年齢やリスクファクターがどれだけあるかなどによって、望ましい検査や頻度は変わってきます。
マンモグラフィのメリットとデメリット
メリット
- 触診ではわからないしこりを発見可能
- 微細石灰化だけの段階で発見した場合、100%近い治癒が期待できる
- 以前の画像所見と容易に比較できる
デメリット
- 被ばく(飛行機で東京~ニューヨークを移動した時の半分程度)
- 妊娠中や授乳中には受けられない
- 若い女性や高濃度乳腺の場合、しこりを見落とす場合がある
超音波検診(エコー)のメリットとデメッリット
メリット
- 被ばくの心配がなく、圧迫による痛みなどもない
- 高濃度乳腺の「しこり」を見落とすことがない
- リアルタイムで検査結果を見ることができる
デメリット
- 微細石灰化を見つけるのが難しい
- 検査を行う医師や技師の技量により、病変を見落とすことがある
- 全体像の記録を残すのが難しく、以前の画像所見と比較できない
乳腺専用3D超音波検査装置Invenia ABUSエイバス
メリット
- 被ばくの心配がなく、圧迫による痛みなどもない
- 高濃度乳腺の女性でもしこりの発見が可能
- 妊娠中・授乳中でも検査することが可能
- リアルタイムで検査結果を見ることができる
- 全乳房の断層データを保存するので、検査する医師・技師の技量に関係なく、
正確に診断でき、以前の画像所見との比較も可能 - マンモグラフィとの相関が取れる
デメリット
- 微細石灰化を見つけるのが難しい
- 痩せ型体型の人では、うまく撮影できないことがある
- 病変の精査には、手の超音波エコーを追加する場合がある
乳がん検診でより精密な検査が必要になったら細胞診や組織診(生検)を行います。細胞診より生検を行う組織診の方がより確実な検査であり、組織診によって最終的な診断となります。
年代を目安にした検診
乳がん検診は1度受ければ安心とういうものではなく、早期発見のためには定期的な検査が重要になってきます。そのため、年齢やリスクに合わせて長期的な計画を立てることをおすすめしています。
全年代 | 第1度近親者(親子、姉妹)に乳がんの方がいる場合など ・エイバス検診(毎年)+マンモグラフィ(毎年) |
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50歳以上 | ・マンモグラフィ(1年~2年に1回) |
40歳代 | 40歳代(リスクにより頻度や検査内容が変わります) ・マンモグラフィ(1年~2年に1回) ・高濃度乳腺の方は、マンモグラフィ(1年~2年に1回)+ エイバス検診(毎年) |
30歳代 | リスクに合わせて頻度や検査内容を選びます。 市町村の乳がん検診は40歳からですので、ご自分の判断で受けることになります。 |
20歳代 | 必要ありません。血縁に乳がん・卵巣がんのご家族がいらっしゃいましたら、ご相談ください。 |
「40歳以上の女性に対し、2年に1度、視触診及びマンモグラフィ併用検診を行う」という指針が2006年度、厚生労働省より通知されています。これにより、ほとんどの市町村では2年に1度の乳がん検診受診を推奨しています。
検診を受ける際には事前に、各自治体の費用負担や加入する健保組合の費用負担、ご自身の近親者に乳がんの方がいるかどうかなどを確認し、どの検査をどのくらいの頻度で受けるのかをお考えください。もちろん、まずご相談にいらしていただいても大丈夫です。
乳がんの手術後のフォローアップ
乳がん手術後の定期検診
乳がんの手術を受けた患者様は、退院後も定期検診を受けることで身体の状態をしっかりと把握することが重要です。術後5年程度は、経過観察や外来の定期検診をする必要があります。なお、乳がんのがん細胞の増殖スピードはどちらかと言うと緩やかなため、術後5年以上経ってから再発する恐れもあり、再発リスクを考慮して術後10年程度はこまめに検診を受けることが望ましいです。受診ペースは、術後5年程度は3ヶ月〜半年に1回、その後は半年〜1年に1回は受診しましょう。検診内容としては、問診、触診・視診、腫瘍マーカー検査、血液検査、マンモグラフィ検査、超音波検査などが挙げられ、その他、必要に応じて画像診断も実施します。術後10年経つと概ね完治したものと判断し、その後は毎年対側乳房(手術していない側の乳房)の状態を確認しましょう。なお、乳がんの再発についての研究は年々進歩しており、病状に応じた多岐にわたる治療法が登場しています。 再発を防ぐためにも、早期発見と早期治療は非常に重要です。
手術後の自己検診
術後でも乳房のセルフチェックを続けるようにしましょう。手術部位、対側乳房、残した乳房を月に1度はしっかりと確認することが重要です。特に、片側の乳房だけで乳がんが生じた方は、対側乳房でもがんが生じるリスクが高いため注意が必要です。セルフチェックで違和感があれば、なるべく早めに当院までご相談ください。
手術側の点検
手術をした方の乳房は、引きつれ、へこみ、しこり、ふくらみ、発赤などに注意して確認するようにしましょう。温存手術を受けた方は、温存した乳房でしこりが生じていないかチェックするだけでなく、乳頭からの分泌物の有無も見るようにしてください。
対側乳房
手術をしていない側の乳房は、乳頭からの分泌物やしこりの有無を確認しましょう。また、ふくらみ、ひきつれ、へこみの有無、パジェット病が原因のただれなどの皮膚症状が起こっていないかもチェックしてください。